やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年10月05日

ツノナシオニ 第11回 衝突


ツノナシオニ 第11回 衝突 


「何を言い出すかと思ったら、問題があったのは僕らの方ですって?
どこからそういう発想が生まれるのか私には理解できないが、まあ、そんなことは、もうどうでもいい。
先生、あなたツノが、確かにツノがあったと仰いましたね」

 トカゲ眼鏡のおじさんは、なぜだか急に嬉々とした表情になって、周りの人に「聞きましたよね、ツノがあったって」だとか、「確かに言いましたね」だとか、僕らの嫌いな例えだけれど、まるで鬼の首でも取ったようにはしゃぎ回っている。
 さっきの優しそうなおばさんが、不思議そうな顔でトカゲ眼鏡に訊ねた。

「あのぉ、佐藤さんのお父さん。
ツノがあったからってどうだって言うんですか?
まだ意見が出尽くしたわけじゃないですし、問題が解決したわけじゃないでしょう?」

 トカゲ眼鏡のレンズが、キラリと冷たく光った。

「ほう、これはまた、異なことを仰られる。
意見が出尽くしてない?
問題が未解決ですと?
いいですか?
彼の父親を名乗る男にツノがあった。
これは、現場にいた先生が、今我々の目の前で認めた疑うべきことのない事実です。
ということはですね、その男が人間ではないことは明らかです。
オニなんです。
オニの子は、当然、オニでしょう?
法律、教育や福祉は人間の為のもので、オニのものではありません。
だって、戸籍が無いんですよ、日本人じゃないんだ。
いや、それ以前に、人間じゃないんだから人権が無い。
つまり、オニである桃山君は、可哀想ではありますが、教育を受ける権利を有しておりません。
すなわち、即刻、退学です。
これ以上、何かお話しすることがありますか?」

 おばさんは、反論しようと大きく息を吸い込んだけれど、口元を歪めて笑うトカゲ眼鏡を見ると、そのまま下を向いてしまった。

 それまでお父さんと僕は、体を路地のタバコ屋さんの角に隠すようにして、顔だけを縦に二つ並べてその話を聞いていたけれど、でも途中からお父さんが、あんまりしつこく僕の肩をトントンと突付くものだから、僕は壁の奥に顔を引っ込めてみた。
 お父さんは僕の肩を両手でやさしく包むように抱くと、僕の目を見てこう言った。

「太郎、もう、帰ろう。
先生には手紙でも送るとしようじゃないか」

「で、でも・・・」

「お前の気持ちは、分かるつもりだ。
でもお父さん、これ以上は、聞いていられないよ」

「・・・・・・」

 僕は、俯いてしまった。

「桃山のおじいちゃんや、鬼が島の近くの漁師さんたちのように、人間ていうのは、みんなやさしくて良い人ばかりだと、そう思っていたお父さんが、間違っていたようだよ。
太郎がこの人間の世界で得るものは、残念だけど何もないようだ。
これ以上ここにいたって辛い思いをするだけだ。
太郎、もう帰ろう」

 でも、僕はどうしても、すぐに帰る気には、なれなかった。
 なぜかと言うと・・・・

「お、お父さん。
先生は僕らのせいであんなに責められて・・・
だからこそ僕、先生と余計に話がしたくなって・・・」

 僕がやっとの思いで声を絞り出したその時、路地の角の向こうで、わあっという叫び声がしたかと思うと、その数倍の声が続け様に起こった。
 何が起こったんだろう?
 慌てて話をやめた僕らは、また首を突き出してそちらに目をやった。
 騒ぎの中心、人垣の輪の中には、尻餅をついたトカゲ眼鏡と仁王立ちでそれを見下ろす先生がいた。
 先生が一歩、歩を詰めると、トカゲ眼鏡はビクリとしたけれど、

「あ、あんた!
じ、自分が何をやってるのか、わかってんだろうなっ!」

 と、そう叫んだ。

《第12回へつづく》




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  児童小説 ツノナシオニ

posted by maruzoh at 12:50| Comment(0) | ◆ツノナシオニ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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