やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年10月04日

ツノナシオニ 第10回 問答


ツノナシオニ 第10回 問答 


 先生は涙が流れるままにまかせて、暫くの間路地裏の古い建物に囲まれた曇り空を見つめ続けていた。
 そして漸(ようや)くそこから目を降ろした先生は、静かに、でも力強く話し始めたんだ。

「ご父兄のみなさん。
僕は、去年教職に就いたばかりのまだ経験の浅い教師です」

 トカゲ眼鏡のおじさんが、またでしゃばって、すぐ話の腰を折ろうとする。

「そう、そこなんです、そこ。
あなたには、教師の資質以前の問題として決定的に経験がない。
残念なことにこればっかりは、時を経てたくさんの子どもや父兄と接しないと、その溝を埋めることはできないんですよ。
つまり、こう言っては申し訳ないですが、あなたには教師としてまだ未熟な訳で、その為にも、こういった父兄との対話や意見、要望を吸い上げるってことが、実に重要になる訳ですよ」

 周りの大人たちがふむふむといった具合に、それを腕組みして頷いている。

 さっきまでの先生は、これ以上涙をこぼすまいと、あの狭い空を見上げていたんだと思う。
 涙を拭わなかったのは、自分の心の力で涙を止めようとしていたんじゃないかなと、僕にはなぜかそう思えた。

「桃山君は、とってもいい子です。
ちょっとおとなしいですが、やさしい子です。
周りの子どもの痛みをわかってあげられる子でした。
桃山君のお父さんも、立派な父親だと僕は思います。
自らの危険を顧みず、子どもの成長を遠くから見に来られました」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、先生。
そんなんじゃ全く私ら父兄の質問の答えになんかなっていませんよ」

 先生の話を遮ったのは、やっぱりトカゲ眼鏡のおじさんだった。

「では、1つずつはっきりさせていこうじゃありませんか。
まずは、あの親子が人間か、それともオニなのか。
これに関しての先生のご意見をうかがえませんかね」

 先生がおじさんを見つめるその眼には、もう涙はすっかりなくなっていたる。

「佐藤さんのお父さん、ご父兄のみなさん。
昨日は誠にご迷惑、ご心配をお掛けいたしました。
僕は今、昨日自分が教室とってしまった行動を、とても悔いています。
自分自身が冷静さを失ってしまったことで、どれだけ桃山君ら親子を傷つけてしまっただろうと。
それと同時に私は、クラスの子どもたちをも、傷つけてしまったのかもしれません。
僕は彼らの心の中にも、一点のシミを落としてしまったのかもしれない。
私は今、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
佐藤さん、あなたは最初、『彼らがオニであるかどうかは、問題ではない』と仰いましたね。
佐藤さんが仰るとおり、桃山君親子がオニか人間かだなんて、問題ではなかったんです」

「そ、そりゃあ、違いますよ、先生!
ご、誤解、いやそりゃあ先生、曲解だ。
私は、あくまで『問題行動を起こす子ども』が重大な問題であるということを言いたかったんです。
言葉尻を捕らえて揚げ足を取った上に、問題のすり替えをしないでもらいたいな」

「ですから、そう言う趣旨の観点で言えば、桃山君は、全く問題行動を起こすような子ではありません」

「し、しかしですよ。
現に昨日の授業参観は、めちゃめちゃになって、中途で終わってしまったじゃないですか?
これが、問題行動以外の何だって言うんです」

 路地の細い道に、少し風がそよいだ。

「あの時、風さえ吹かなければなぁ」

 そう独り言のように言った後、先生はこう続けた。

「僕はただの新米教師ですから、学問上の分類などわかりませんが、
生物学上、ツノが生えている人間をオニと定義するのでしたら、桃山君のお父さんは、もしかしたらオニなのかもしれません。
ただし、ツノのない桃山君も、オニと言うべきなのですか?
昨日の授業参観で、問題があったのは、明らかに僕らの方、いえ、担任である僕の責任です。
桃山君親子には、何の罪もありません」

《第11回へつづく》




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  児童小説 ツノナシオニ

posted by maruzoh at 08:42| Comment(0) | ◆ツノナシオニ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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