やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年10月02日

ツノナシオニ 第8回 代休


ツノナシオニ 第8回 代休 


 僕の通っていた小学校の父の日の授業参観は、毎年6月の第3日曜日に行われるから、次の月曜日は代休でお休みになっている。
 でも、せっかくのお休みも昨日のお天気とは打って変わって、今日はどんよりと今にも降り出しそうな空模様、まるで僕の心の中みたいだ。

 僕とお父さんは、昨日の夕方から引越しの荷造りをして、夜も随分と遅くなった頃、ようやく鬼が島に帰る準備が整った。
 クラスの友だちにお別れもせずに、急にいなくなってしまうのは、とっても辛いことだけれども、もしも昨日の騒ぎがもっと大きくなってしまって、鬼が島の仲間のオニたちに迷惑がかかるようなことになったら、もうこれは、ぼくら親子だけの問題じゃなくなっちゃう。
 こんな時は、人知れずこっそりと、そう「静かに消えてしまうに限る」と、おじいちゃんは言うんだ。
 わかったような、分からないような気持ちで、僕は教科書や筆箱をダンボールに詰めた。
 僕は、お父さんを悲しませないためにも泣くまいと思っていたけれど、やっぱり涙がぽろぽろ出てしまって、お父さんはその度に「ごめん」を繰り返した。
 この荷物は一旦、おじいちゃんの昔からの友だちに送られてから、知り合いの魚船を乗り継いで鬼が島まで運んでくれることになっていた。
 それに合わせるには、僕らも今日の午後には、ここを出なければならないそうだ。

 ぽっかりと空いてしまった月曜の半日を、僕らはどう過ごそうかと話し合った。
 お父さんは、遊園地に行きたいと言っていたけれど、僕は最後に、どうしても西原先生に挨拶がしたかった。
 たったの2ヵ月半だし、ちょっと頼りない先生だったけれど、一生懸命僕をクラスになじませようと気を使ってくれたことは、僕にも充分過ぎるほど伝わってきた。
 僕は、そのお礼が言いたかったんだ。
 おじいちゃんに「2メートルを超すお前さんの大きなお尻で座れる座席なんて、どこにもないだろう」と説得されて、お父さんはやっとジェットコースターを諦めた。
 クラスの連絡網を調べたら、西原先生の家はすぐにわかった。
 西原先生は独身だし、先生になりたてのほやほやだから、まだ大学生時代のアパートに住んでいたみたいで、先生が電車で毎日1時間以上もかかるところから通っていたなんて、僕はちっとも知らなかった。

 それから僕とお父さんは、2つも電車を乗り継いで西原先生のアパートのある駅に降り立った。
 時計の針は9時を少し回っていた。
 昨日の今頃、お父さんの帽子が風で宙に飛んだんじゃないかな。

 駅前の交番のお巡りさんに聞いたら、アパートは駅前商店街を過ぎて5分ほどで、タバコ屋さんの角を曲がった突き当たりだと言っていた。
 描いてもらったへたくそな地図を頼りに、僕たち2人は今にも振り出しそうな梅雨空の中、まだシャッターの降りたままの人通りのない商店街を歩いた。
 商店街を抜けて地図の通りに進んでいくと、古びた「タバコ」の看板が見える。
 きっとこの角を曲がれば先生のアパートがあるに違いない。
 僕は、ひとつ大きく深呼吸をしてから1歩足を踏み出した。
 その角を曲がった瞬間、僕の心臓がドキンとしたのは、けっして緊張のせいではなかった。
 お父さんも息を呑んで、立ち止まってしまった。

 アパートの前では、10人を越えるの大人たちに囲まれて、口々に言葉を浴びせられている先生が、カッと目を見開いて立ち尽くしていた。

《第9回へつづく》




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  児童小説 ツノナシオニ

posted by maruzoh at 08:40| Comment(0) | ◆ツノナシオニ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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