やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年09月21日

まりなさんと王様 最終回 まりなさんの選択


〜憧話 こころ王国 episode 1〜
まりなさんと王様 最終回 まりなさんの選択 


ダンテBARに戻った一行の冷え切った体を、
マスター特製のブランデー入りホットミルクが体の芯から暖めてくれました。

「今日は、ホント、いろんな事があったなあ・・・」

カウンターの中でマスターがぽつりと、誰に言うでもなしにつぶやきました。

「そうですな。
特にまりなさんは、驚きの連続でしたでしょう・・・」

王様は、まりなさんの方をちらりと見ましたが、
まりなさんは、マグカップを両手で抱えるようにして、
壁の一点を凝視したまま身じろぎしません。
どうやら何か考え込んでいるようです。
そう、まりなさんは、どうにもまとまりのつかない今の自分の気持ちを、
何とか落ち着かせて冷静に考え直そうとしているようでした。

壁掛けの時計の上で針が重なっては離れ、
ひどく長かった月曜がいつのまにか終わっていました。
まりなさんを探すのによほど疲れたのでしょう。
カウンターの中でマスターの奥さんが、
こっくりこっくりと舟を漕ぎ始めてしまいました。
王様はそれを見ると、執事長になにか耳打ちをして席を立ちました。
それに合わせてMARUZOHくん、文部大臣も続きました。

「マスター、そろそろお暇(いとま)する時間のようです。
特製のブランデー入りホットミルク、これは実に暖まる物ですな。
ご馳走様でした」

マスターは横の奥さんを突付いて起こすと、
カウンターから歩み出て、王様の前で深々と頭を下げました。

「王様、今日は本当にありがとうございました。
この御恩は、一生忘れません。
またこちらに来た際には、是非お立ち寄りください。
特製ホットミルクくらいならじゃんじゃん振舞いますから。
ココロニア王国が1日も早く独立できることを、
心よりお祈りしています。

文部大臣さんも、ありがとうございました。
いやあ凄かった、鳥肌が立ちましたよ・・・
私に取り憑いた悪霊が落ちるほど凄かった。
宜しかったら、たまにはピアノ弾きに来てくださいね。
今日のお客さんからも、また是非にと言われてますんで。

MARUZOHさん、まりなちゃんをありがとう・・・
これから寒くなるんで、北風が凍えそうな夜は、
ここで歌っていただいても結構ですよ。
そうだ、そしたら女性客が増えるかもしれない。
週一くらいでどうです?レディースデイにしますよ。

それから、執事長さん。
タカシくんによろしくお伝えください。
どんどん人前で歌いましょうよ。
「タカシくんの童謡の夕べ」とか、どうですか?
もちろんここで。
やったら、流行るだろうなあ・・・・」

マスターの軽口に王様が笑いました。

「はははは、マスターぐらいの商魂とアイデアがあれば、
ダンテBARは、大丈夫そうですな」

「ココロニア王国御用達のジャズバーですから。
ははははは・・はは・・は・・・」

マスターも笑い返しましたが、その笑いが段々と小さくなると、
遂には、思い詰めた様な表情で黙り込んでしまいました。
そして、ゆっくりとまりなさんの方に向き直りました。

「最後に、まりなちゃん。
本当にごめんなさい・・・
俺、これからもずっと応援してるから。
もし、このお店をまだ続けることができて、
そして、この俺が、もう少しやさしくなれたなら・・・
そしたら、い、1回でいいんで・・・、
また、歌いに来て・・ください・・・」

そう言うとマスターは、また泣き出してしまいました。

まりなさんが、椅子をがたんと言わせて立ち上がりました。
まりなさんの目にも、いっぱいの涙が溜まっています。

「ち、違うの・・・
違うんです、マスター・・・
謝らなきゃならないのは、私の方なんです。
わ、私、本当に今まで、甘えてばかりでした・・・
夢ばかり語っていて、そのくせ、それに見合うだけの努力なんて、
私、なんにもしていなかった・・・
ただなんとなく、漠然と毎日を過ごしてただけで、
いつか誰かが声を掛けてくれるんじゃないかって、
そんなことばっかり考えていて・・・
自分の力では、何一つ具体的に行動していなかった・・・
そんなんだから、半年以上も一緒にいたのに、
マスターがそんなにまで悩んだり、苦しんだりしていたことも、
私、気づいてあげられなかった・・・
結局私、自分のことしか、
自分が楽しく生きることしか考えていなかった・・・
私を笑わせてくれた冗談や、お客さんに話してた馬鹿みたいなお話、
マスターがどんな気持ちで話してたかなんて、
私、ちっとも、気がつこうとさえしてなかった・・・

本当に謝らなきゃならないのは・・
私の・・、私の方なんです・・・
マスター・・・ 
ご、ごめんなさい・・・・」

まりなさんは、ぽろぽろ流れる大粒の涙を拭おうともしないで
マスターに深々と頭を下げました。
そして今度は、MARUZOHくんの方を見ましたが、
なかなか言葉が出てきません。

「・・・・・・・・
私・・・
MARUZOHさんのこと、好きになり始めている・・・
ココロニアに行ってみたいだなんて、思い始めてる・・・
今の自分の心に素直になるのが、1番じゃないかと思いもしました。
で、でも・・・
私、ホントは逃げてるんじゃないかって・・・
ライブ大失敗したり、自分の駄目さで人を傷つけてしまったり、
そんなことから、今、ただ逃げ出したいだけじゃないかって・・・
私、そんな風に思ったんです。

それじゃあ、夢を追ってる振りだけで何もしてなかった今までと、
私、なんにも変わってないんです。

それに、私は・・・
私にとっての、小さい頃からの歌手になるって夢が、
そんなに軽いものだっただなんて思いたくはない。
たった一度の・・・
たった一度きりの失敗やトラブルなんかで簡単に崩れてしまうような、
そんなちっぽけな思いなんかじゃなかったって、そう思いたいんです・・・
だって、ここで私がココロニアに行ってしまったら、
それを認めてしまうことになってしまう・・・
独立戦争の時、王様が言ってたように、
私が今まで生きてきた人生の一から十までを、
全部否定しなきゃならなくなっちゃう。
こんなに大事なお話だから・・・、
MARUZOHさんに言われたように、本当は、もっとじっくり考えて、
時間をかけてお返事すべきだとも思う・・・

で、でも私・・・
もう1度・・、がんばってみたい・・・
今までの弱い、駄目な私に勝ちたい・・・
もう1度このお店でがんばって、
そして、がんばった人だけが得ることができる 
そんな、皆さんみたいなやさしさを手にできるまで・・・
私、精一杯までがんばってみたいの・・・
MARUZOHさんに頼ることなしに、
皆さんがそうしてきたように、自分の力でがんばってみたいの・・・
だって、今のままの私じゃ、
ココロニアに行く資格なんて、ないもの・・・・
皆さんの仲間になる資格なんて、ないもの・・・
ましてや・・・・
MARUZOHさんのお嫁さんになんか、なれるわけなんてない・・・
だ、だから・・・、だから・・・
MARUZOHさん、ごめんなさい・・・
本当にごめんなさい・・・」

「・・・・・・」

MARUZOHくんは、黙って頷きました。

「ま、ま、まり・・なちゃ〜ん」

マスターの顔は、もう、くしゃくしゃです。
まりなさんもやっぱり、くしゃくしゃです。
おやおや、王様もハンカチを出し始めました。
MARUZOHくんも、奥さんも、文部大臣も、
沈着冷静がモットーの執事長でさえ泣いています。


このお話は、なんて涙の多い物語なのでしょう。
ココロニア独立を目指した日の涙。
タカシくんのお祖父ちゃんの涙。
公園でのまりなさんとマスター夫婦の涙。
でも、その涙の全てに、嘘はありませんでした。
王様の言うとおり 感情がこころの器を満たした時に、
それが雫となり瞳からこぼれ出た涙でした。
そして、それはわたしたちが日々流す、
喜びの涙も、悲しみの涙も、悔しさの涙も、感動の涙も同じことなのです。

真冬の冷たい空気で凍てついたガラスが、
お部屋の暖かさで曇って、そして、水滴になって落ちるように、
すれ違いによって冷たくなってしまった2人の心が、
お互いの暖かい心に触れなおして、涙として落ちたのです。
ダンテBARは、これからまりなさんの歌とマスターのおしゃべりで、
この街一番のあたたかな、やさしい空間になることでしょう。
天の神様もダンテBARのあたたかな涙にもらい泣きしたのでしょうか。
いつの間にか窓の外は、あの日の晩と同じやさしい霧雨模様です。

まりなさんの今後のがんばりと、ダンテBARの繁盛、
そして、ココロニア王国の独立を祈って、
このあたたかなお話、こころ王国のepisode1は、
この辺でお仕舞いにすると致します。
それではまた、episode2でお会いしましょう。

        〜FINE〜




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 現代小説 こころ王国 まりなさんと王様

posted by maruzoh at 06:54| Comment(0) | ◆まりなさんと王様 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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