やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年09月01日

まりなさんと王様 第11回 豹変


〜憧話 こころ王国 episode 1〜
まりなさんと王様 第11回 豹変 


おどけてチークダンスをやめないマスターに奥さんも、
「もう、馬鹿ねえ」と苦笑をし始めました。
妹さんが「ヒューヒュー」と囃し立てています。

そんな中、まりなさんは1人、悩んで、迷っていました。
ダンテBARの経営がここまで悪いとは思ってもいなかったのです。
夢の第一歩になるかも知れないHart Landのライブは大事でしたが、
まりなさんは半ば、Hart Landは諦めようと思っていました。
もし自分がHart Landのライブを選んだりしたら、
一筋の光明をやっとのことで見つけたマスターを
また奈落の底に落とすことになるであろうことは、
まりなさんにだって充分わかっていたからです。
でも正直、悔いが無いわけではありません。
開演直前にドタキャンをする訳ですから信用はがた落ち、
当然今後の出演にだって大きく影響するはずです。

まりなさんは、まずは事実を思い切って言うことにしました。
そして、全てを打ち明けた上で、
マスターにどうしたら良いか決めてもらおうと思いました。
心臓が早鐘を打つようにドキドキしています。

「マ、マスター。
じ、実は私、今日、これから・・・」

そこまで言うと、マスターは眼をまん丸にして振り返りました。

「こ、これからって・・・」

そして、それまで握っていた奥さんの手を荒々しく振りほどくと、
まるで信じられないといった面持ちで、
まだ話そうとしているまりなさんを遮って、こう言いました。

「まりなちゃん、よ〜く考えてね。
あなたの勤め先が、潰れてしまうかもしれないんだよ。
そしたら、まりなちゃんだって、失業者だ。
ご飯も食べられなきゃ、家賃も払えない・・・
でも、君がピアノを弾くことで、それは回避できる。
こ、これから何があるか知れないけれど、
これ以上、大事な用事なんて、世の中にあるわけないでしょ?」

「あ、あの・・・」

まりなさんは、咄嗟に返答ができずにもじもじしてしまいました。
するとマスターはずいっと1歩、歩み出て、
話を始めようとしたまりなさんを制して、更に続けるのです。

「いやいや、まりなちゃんはことの重大さが分かってないんだ。
この店が潰れたら、僕らも応援してる君の夢、
ジャズシンガーになるって夢だって、
ここで潰(つい)えてしまうかもしれないんだよ・・・
いったい、これからどれだけの用事があるって言うんだい?」

マスターの言葉で、まりなさんの心臓はもう破裂しそうです。
でも、まりなさんは真っ直ぐにマスターの眼を見据えると、
勇気を振り絞って言いました。

「ライブが…
Hart Landでライブがあるんです。
今日の夜、1ステージ分だけ空きができたんで、
店長さんに誘っていただいたんです」

マスターの眼が、またまた、まん丸になりました。
俯いて近くの椅子に乱暴に腰を下ろしたマスターは、
クシャクシャの煙草を胸ポケットから取り出すと、
ライターで火をつけて、大きく煙を吸い込みました。
それから、「ふーっ」と一息ついて顔を上げると、
そこには、今までまりなさんの見たことのない
氷のように冷たい眼をしたマスターがいました。
そして、こう言ったのです。

「さんざん面倒みてやった挙句の果てが、へんっ、これかい?
全く、いやんなっちゃうよな〜。
ちょっと大きいとこから声掛けられりゃ、ホイホイついてく。
ああ、やだやだ、義理と人情も地に落ちたもんだよ・・・」

「そ、そんな・・・」

まりなさんの声をまた遮って、マスターが続けます。

「そんなも、こんなもないでしょうが。
だって今日は、Hart Landのトライアウトライブの日じゃないの。
俺だって一応、商売敵の動向は、掴んでるつもりだよ」

まりなさんは、トライアウトライブというのが分からなかったものですから、
答えることもできずにいましたが、

「すらっとぼけるのも良い加減にしろよ。
出演者が知らない訳なんてないだろ?
これからのレギュラーを決めるために5組が30分ずつやる、
月1回の新人査定ライブだろ?
そりゃ、大事な用のはずだわ」

マスターの説明を聞いて、まりなさんは、はっとしました。
確かに、店長さんから持ち時間は30分と伝えられていました。
でも、まりなさんは今日のライブが、
これからのレギュラーを決める為の新人査定ライブだなんて、
そんなこと、本当にこれっぽっちも聞いてはいなかったのです。

《つづく》




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 現代小説 こころ王国 まりなさんと王様

posted by maruzoh at 06:48| Comment(0) | ◆まりなさんと王様 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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