やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年08月31日

まりなさんと王様 第10回 事故


〜憧話 こころ王国 episode 1〜
まりなさんと王様 第10回 事故 



マスターはしばらくの間、「ええ」だとか、「はあ」だとか、
受話器に向かって気の無いような返事を続けていましたが、
ゴホンと大きく咳払いをした後、大きな声で言いました。

「お任せください。
1時間、いえ30分ほど開演の時間を遅らせましょう。
それだけの時間をいただければ、なんとかしてみせましょう。
いえいえ、大丈夫ですとも、大船に乗ったつもりでいてください」

マスターは、「大丈夫」という言葉をあと3回ほど繰り返し、
電話を切って振り向きました。
そして、その言葉とは裏腹に、大きな溜め息を一つ吐きました。

「はあぁぁぁ・・・
FREE BIRDSのピアノの吉田さん、
この店に向かう途中にバイクでこけて、
左手の薬指・・・、骨折だって・・・・」

「ええーっ?
じゃ、じゃあ、今日のライブ、どうなっちゃうのよ」

マスターの奥さんの金切り声が、店内に響きました。
まりなさんは、妹さんと顔を見合わせてしまいました。

「そうなんだよ。
このライブは、千載一遇のチャンスだと思ったものだから、
この日に備えて俺は、借金までして、いろいろ取り揃えた。
ワインも、シャンパンも、キャビアまでもだ。
だから、ライブが開けなきゃ、キャンセル料を貰ったところで、大赤字だ。
それどころか、借金の返済のことを考えたら、
溜まってる家賃や酒屋への支払いもできやしない。
このままじゃあ、年を越せるかどうか・・・」

「あ、あんた、どうする気なのよ。
家には、まだ中学生の子供がいるのよ。
あんたのジャズ道楽で家族を路頭に迷わせる気なの?」

「まあまあ、落ち着けよ。
俺もさっき吉田さんの事故の話を聞いたときには、
正直、心臓が止まるかと思ったよ・・・
でも、逆に思ったんだ。
これは、またとないチャンスじゃないかってね・・・」

「チャンス・・・?」

奥さんの険しい表情が、ちょっとだけ緩みました。
そして、濡れ布巾を握りしめていた自分に気づいて、
慌ててテーブルに布巾を返すと、
話の続きをせがむようにマスターの顔を覗き込みました。

「幸い白石さんたちは、1周年である今日、
是が非でもライブを演りたがっているんだ。
さっきの電話からも、それはひしひしと伝わってきた。
そこで俺は、白石さんたちに恩を売れないかと考えたんだ」

マスターは、にやりと作戦参謀のように笑いました。

「だって、吉田さんは指を骨折してるんでしょ?
ドラムスとベースだけで、何を演るってのよ・・・」

「吉田さんの怪我したのは、左手の薬指。
吉田さんには、右手だけで弾いてもらう。
そして、まりなちゃんくらいのピアノの腕前があれば、
スタンダードナンバーの左手のパートを合わせることは、
FREE BIRDSくらいの素人バンドレベルなら、
それほど難しいことじゃないはずだ」

「えっ、だって・・・」

まりなさんは、思わず口をついてでてしまった言葉を
やっとの思いで飲み込みました。
商売敵とも言うべき「Hart Land」へのライブ出演のことは、
誰にも話していないのですから。

「痛みに耐えながらも、演奏する吉田さんと、
それを横から必死にサポートするまりなちゃん。
そして、吉田さんを気遣いながらものっていく他のメンバー。
4人とも、玉のような汗だ。
なんとか逆境を乗り越えて辿り着いたラストナンバーでは、
感動の拍手と、涙と、スタンディングオベーション!
そして、以降ダンテBARは、感動した関係者のみなさん、
白石さんたちの紹介のお客さん、
あるいは、評判を聞きつけたお客さんで、
連日大盛況、というわけだぁ。
いやあ、災い転じて福と為すを地でいくサクセスストーリーだね。
わははははははは・・・」

マスターは、自分の描いたストーリーに完全に陶酔してしまい、
奥さんの手を取ってチークダンスまで始める始末です。
でも、まりなさんのライブの時間は、刻一刻と近づいています。

《つづく》




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 現代小説 こころ王国 まりなさんと王様

posted by maruzoh at 13:57| Comment(0) | ◆まりなさんと王様 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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