やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年08月19日

ワレナベニトジブタ 第15回


ワレナベニトジブタ 
〜人生をやり直して見たい方へ〜 第15回 


私は、半ば放心していた。

博士の説明は実にわかりやすく思えたが、その実、内容を反芻してみると、
もっともっと深い事実や仮説が頭の中、次から次に浮かび上がってきて、
とんでもないことを知ってしまったものだと今更ながらに恐ろしくなってくる。

私はただあの時の家出が成功していたらと、
純粋にそう思っただけだったのだ。
そう、そうなんだ。
あの時の私は、私のもうひとつの人生を
ほんの、ほんの興味本位で、単純に見たかっただけだったんだ。
それが、どうして・・・

こんな一小市民の私ごときが、
神々の支配するような領域の話を
聞かされる羽目になってしまったんだろう。
私がこの話を聞いたところで
いったい私の何が変わると言うのだ。
私には神の意思に抗う何の手段もないし、
博士の言うとおりであれば、ここでこの話を聞くことは、
私の一生の中では既に予定の行動だったはずだ。
・・となれば、きっと私はこれからも、
今までどおりに粛々と日常を繰り返すのみ。
それ以外の選択肢など、どこにあると言うのだ。

「あっ!そうだ!」

その時、私はモニター画面のことを思い出した。
「割れ鍋に綴じ蓋現象」の話に夢中になってしまい、
私はすっかり分割されたモニター画面左上の1人、
自分の過去を知らない私のことを失念していた。

そうなのだ。
彼というか、もう1人のあの私だけは、
博士とは何の面識もないわけだから
自分の過去を知らないばかりでなく、
当然、「割れ鍋に綴じ蓋現象」の話なぞ知る由もないはずだ。
彼がどんな行動をとっているかを追って見れば・・・・

私の思いを見透かしたように
博士が柔らかな笑顔で私に語りかけた。

「あれからかなりの間、あなたが呆然としていたものですから
モニターの画面はもう既に数日を経過してしまいました。
ほら、御覧になってください。
見難いでしょうが、そこにある99のモニターは、
ついさっきまでのあなたと私ですよ。
つまり、これからしばらく経つと
モニター画面は、未来を映し出します。
左上の別行動の1人も含めてね・・・」

「み、未来を・・・・」

未来を映す。
私は、唾をごくりと飲み込んだ。
こどもの頃夢中になって読んだSF小説のタイムマシンが、
多少形を変えて目の前で実演されるのだ。

「あまりにも小さすぎるので、元の16分割に戻しましょう。
もちろん、左上の画面はそのままです」

そう言うと博士は再びキーボードを軽やかに打ち、
それに呼応してそれぞれの分割された画面が大きく映し出された。

「実は、この画面に戻したのには理由があります。
画面のあなたの細かい表情の違いに注目して頂きたいのです。
多少枝分かれをしてしまった1人と残りの15人は、
ある事実をきっかけに再びリンクします。
そこがポイントです、注目してください」

緊張の中、モニター上で更に数時間が過ぎ、
今、外を照らしているあの太陽が夜を潜り抜けて、
再び地平を照らし始めた。
明日の朝である。

16人の私は、食卓で皆同じようにトーストを食べている。
妻が新聞を持ってきてくれた。
「ありがとう」と私はそれを受け取る。
左上の私は、いつもどおりに「天声人語」から読み始めたが、
他の15人は硬い表情のまま社会面を真っ先に開いた。
暫くお目当ての記事を探す私だったが、
何かを見つけたのだろう、15人の私の眼がかっと見開かれた。
むさぼるように新聞記事を繰り返し読んでいた私の眼が、
大きな吐息と一緒にゆっくりと閉じられていった。
それはまるで、全てを理解したという表情だった。

一方、左上の私は、コーヒーを口にしながら社会面を見ていたが
突然「あっ!」と大声を発したかと思うと、
新聞記事を食い入るように読み始めた。

「さあ、ここです」

「な、何かが、
何かの記事が、書かれていたんですね?」

左上の私のショックは、他の15人のそれとは明らかに違った。
私の思い入れや先入観が、多少はあったのかもしれないが、
そこには、凄まじいほどの衝撃の後、それを受け止めて、
乗り越えようとする私がいたのだった。
それは、あの日の父のように・・・

しかし、それにしても、この記事は何なのであろうか。
私にはそれが、気になって仕方がない。
私の顔にそう書かれていたのだろう。
博士が私に言った。

「残念ながらこの角度では、
記事の内容までは確認はできません。
やれば出来ないことはありませんが、
私がこれ以上あなたの未来のプライバシーを探るのも
どうかと思うんです・・・

どうでしょう?
続きは、あなたご自身で、
明日の朝刊を読んでいただくというのは・・・」

《つづく》


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posted by maruzoh at 08:57| Comment(0) | ◆ワレナベニトジブタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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