やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年08月15日

ワレナベニトジブタ 第13回


ワレナベニトジブタ 
〜人生をやり直して見たい方へ〜 第13回 


16分割された画面の中で、16人の私が忙しそうに動き回っている。
これは、モニターの時間の経過を30倍速の早送りにしているせいなのだが、
私にはこれがどうにも、狭い間仕切りで分けられたたくさんの私たちが、
実験装置の中をまるで実験動物よろしくちょこまかと動き回っているようで、
なんとも気分が悪くなってしまうのだった。
それともこの気分の悪さは、後に訪れる結論への緊張からくるものだろうか・・・

30倍速というとかなりの早さである。
2秒で1分。 10秒で5分だから・・・
すなわち、10分で5時間、48分でちょうど1日の計算になる。
従って 動きは相当に早いのであるが、12分を経過した頃、
左上に位置する唯一「過去を知らない私」が
他の15人と違う行動をとったのを私は見逃さなかった。

「あっ!博士、こ、これ」

「スピードを緩めてみましょう。
何かと関連する行動かもしれません。
ビルを出てから6時間後、いずれのあなたも夕食の場面ですね」

16人の私がダイニングのテーブルに座っているのだが、
15人の私は、先週の私が現実にそうであった様に
隠し事をしている手前、妙に女房に愛想を振り撒いているのに対して、
左上の私だけが、なにやら女房に文句を言っているのだ。

揉めている画面を拡大し、音声を出力してみると、
どうやらビールが冷えていなかったことに私が腹を立てているようである。
私は、大きく嘆息した。

「我ながら情け無い。
きっとビルの前で踏ん切りがつけられなかった自分が歯痒くて、
女房に八つ当たりをしてるんですよ・・・」

「分からないではないですが、これはかなり険悪な雰囲気ですね。
しかも、奥さんも一歩も引かないじゃないですか。
いつものお宅の夫婦喧嘩は、こんな具合ですか?」

「いやぁ、滅相もない。こんなのは、初めてですよ。
だっていつもの私ときたら一方的に言われるだけで、
実は、表面的には喧嘩に見えますが、実は似て非なるものなんです。
それが夫婦円満の秘訣だと、私は今までずっと思っていましたから・・・」

「ところが、ここでは・・・」

「先制して、逆襲にあっても、なおも反撃してますね。
いくら虫の居所が悪いとは言え、いやぁ、驚いた。
私も意外とやるもんですね。ちょっと応援したくなってきますな」

もう一人の私の反乱を異世界から応援している私に
博士が笑いながら語りかけた。

「顛末は気になるところですが、時間がありません、先を急ぎましょう。
このようなささやかなギャップ、枝葉の事件は数多く起きるんですよ。
しかし、我々が必要としているのは、
あなたの人生の根幹に関わる変化が現れるかどうかなんです。
例えば、今回の夫婦喧嘩が離婚に発展するとなれば、話は別ですが」

「そ、そんな・・・
ビールがぬるかったからって離婚していたら、
パラレルワールドの世界は、バツイチの私だらけになってしまいますよ」

異世界の住人の2人にせよ、私たちと同じ夫婦が離婚すると言うのは、
私たちにとってもあまり気分のいいものではない。
博士は、今までに何度か見せた驚いたような表情で私に語りかけた。

「まあ、今のは冗談ですが、
鈴木さん、あなたは相変わらず実にカンが良い。
今あなたが抱いた不快感と言うか違和感、
それをぜひとも忘れないでいただきたい。
実はそれこそが、最大の謎の根源を解く鍵なのです」

「謎の根源を解く、鍵?」

「さよう、極めて重要な鍵です。
実を言うと今、あなたは無意識のうちに、
持ち前の理解力とカンの良さで
これから私が話すつもりだった真相に近づいていたのです」

私は、博士の言っている意味が全く分からずにいた。

カタタタ カタタタタ・・

博士は、キーボードを叩いて
画面を再び早送りにすると、私に向かってこう言った。

「もう1度思い出してください。
あなたのもともとのご依頼は、あなたの家出が成功した場合、
あなたはどんな人生を送っていたか、というものでした。
上京して和田先生に師事し画家として大成していたら、
あなたは今の会社で知り合った奥さんとは出会わないはずですし、
当然結婚もしていないはずなのです。
もしかして、結婚相手はあの西条由紀さんだったかもしれません。
本来、そんなストーリーだって出現率はゼロではないはずなんです。
ところが、無作為に選んだこの15人のあなたと過去を知らないあなた、
そのいずれの奥さんが、現在のあなたの奥さんであるということ。
これは、なぜなんでしょう」

言われてみれば、確かにそうだ・・・
無作為に選ばれたはずの16種類の私の人生。
その16人全ての配偶者が、現在の私の妻なのは一体なぜなのだろう?
16通りの人生があったら、16人の妻がいてもおかしくはあるまい。
16人では、サンプル数が少ないのではないのか・・・

博士がそんな私の疑問を先回りして言った。

「鈴木さん、こんなことも出来ます、どうですか?」

博士がまたキーボードを叩くと、16分割が一気に25分割に変わった。
1列1行が1つずつ増えたのだ。

「左の1番上のみ固定して、無作為に増やしてみましょう」

博士がキーボードのエンターキーを押す度、
画面は36分割、49分割、64分割と増え続け、ついには10×10。
実に100組の実に小さな私たちが画面に映し出された。
映し出されたのは、全てが全て、漏れなくキッチンの私と妻だった。

鈴木さん、『ワレナベニトジブタ』って諺、ご存知ですよね?」

呆気に取られている私に、博士が妙なことを聞いた。

《つづく》


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posted by maruzoh at 15:52| Comment(0) | ◆ワレナベニトジブタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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