やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年08月13日

ワレナベニトジブタ 第11回


ワレナベニトジブタ 
〜人生をやり直して見たい方へ〜 第11回 


私は大きく息を吐き出してからゆっくりと顔を上げた。
いつしか立ち上がっていた博士が、
私の顔を覗きこんで何かを確認したように思えた。
博士は無言で軽く頷き、モニター画面を静止画像に切り替えると、
私と眼を合わせないようにして静かに語り始めた。

「自分が無意識の内に消し去った封印した記憶と、
それを埋めるべく自分で作り出した虚構の記憶。

自分でさえ忘れていた過去が、何かを切欠に突然呼び覚まされ、
全く思いもかけなかった本当の過去、真実を突きつけられたら、
ほとんどの方は、当然、大きな衝撃を受けます。
それはそうでしょう。
今まで全ての価値観の中心になってきたこの自分が、
例え無意識下であったとは言え、
自分自身を欺き続けていたことを知る訳ですから。
これから先の自分は、一体何を信じていけばいいのか、
いや、こう考えている自分さえ虚構の存在ではないのか・・・
突然のこの断罪とも言うべき自らによる自らの告発は、
自らを見失なってしまい、最悪、自我の崩壊、
つまり発狂してしまったとしても、
何ら不思議はないほどの衝撃のはずです。
しかし、不思議なことなのですが・・・」

そこまで言って、博士は一息ついたがのだが、
私にはその続きである回答が、なぜかはっきりと分かった。

「さ、先ほどの父の表情は、確かに僅かな逡巡はありましたが、
私には父が全てを、瞬間的に理解し、受け止め、
そして、昇華させたと・・・
そんな風に、見えてしまったのです。
自分を見失ったりすることなど微塵もなく、
むしろ、自らの記憶や心に掛けられていた
半透明のベールを脱ぎ捨てるその瞬間を、
封印したその日から待ち詫びていたかのように、
力強く受け止めていたのです」

博士は、私の言葉に2度ほど力強く頷くと、話を継いだ。

「そうなのです。
鈴木さんのお父様もそうでしたが、ほとんどの方々は、
まるで、以前からこの日が来ることを知っていたかのように、
何らかの儀式を執り行うように平然と、
過去の自分と、現在の自分とを、
しっかりと繋ぎ合わせて受け止めるのです」

博士は、モニターの脇の椅子に腰掛けると、
モニターに目をやり続けた。

「今回は、車中を見て頂く為、
出現率の低いパターンでご覧いただきましたが、
実際にあなたが経験した駅のホームでのやり取りはもちろん、
他のあらゆるパターンの狂言家出においても、
漏れなく、全てのお父様は、
あなたを通して本当の自分を見つけています。

これも推測の域は出ませんが、
恐らくお父様は、あなたの家出を知ってすぐ、
それに対し何かの不自然さを感じたのではないでしょうか。
しかし、その時点ではそれはまだ、
漠然とした直感や予感めいたものに過ぎなかったはずです。

その言い様の無い不自然さが、形を成して現れたのが、
駅のホームで不安に押しつぶされそうにして、
救いを求めているあなたでした。
お父様が無意識の内に自身の過去にリンクさせて描いていた、
まさに思い通りの光景、あなたを目の当たりにした、
そう、あの瞬間なのです」

「そして、父は・・・」

「そうです。
思い出したのです。
思い出して、瞬時に向き合ったんです。
自分の中に隠されていた、いや、無意識とは言え、
封じ込むように隠していた自分の過去と・・・
お父様は、自分が思い悩み嘆くことよりも、
目の前で苦悩し、助けを求めているあなた、
自らのDNAを継ぐ者に手を差し伸べ、救う道を選んだのです」

静止されたモニターを指差して、博士は更に続けた。

「御覧なさい、お父様は、あなたを抱きしめています。
朝早く人は少ないとは言え、公衆の面前で21歳にもなる息子をです。
あなたのお父様は、よくそんなことをなさる情熱的な方でしたか?」

「い、いえ。
どちらかと言え派手なことを嫌う・・・、
少なくとも人前でこんなことは、とてもしそうもない人です」

「きっとお父様は、あなただけでなく、
数十年ぶりに再会した失くしていた過去も一緒に、
抱きしめていたんじゃないでしょうか・・」

《つづく》


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posted by maruzoh at 13:55| Comment(0) | ◆ワレナベニトジブタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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