やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年08月12日

ワレナベニトジブタ 第10回


ワレナベニトジブタ 
〜人生をやり直して見たい方へ〜 第10回 


「親の心子知らず」とはよくぞ言ったものである。
画面の中、私の心を見透かしているであろう父親を見て、
親とは、子が思っているよりも遥かに経験を積んだ大きな存在、
酸いも甘いも噛み分けてきた、練れた「大人」なのだということを、
恥ずかしながら思い知らされた。
短絡的で直情径行な子の夢や理想に反対する親の考えとは、
子の思う2手も3手も先を読んでいるばかりでなく、
ぺしゃんに打ちひしがれてしまった子の逃げ道さえも、
さりげないように見せて、その実周到に用意されていたものだったのだ。

私も2人の子を持って親になったつもりではいたが、
あの時の私の父親の「大きさ」を知ってしまった今、
今の私には、父親としての資質が到底足りているとは思えなくなってしまった。
いや、そもそも、こんな私が父親になってしまって良かったのだろうかと、
2人の子どもたちや妻に申し訳なく思い、今更ながらに思い悩んでしまう。
私は、家族にとって、どんな風に映っているのだろうか。

しかしである。
全ての年長者が、ただ単に年を取ったからと言って、
相手の心の内を覗ける千里眼を持った存在、
言わば、仙人みたいな存在になれるわけではないはずだ。
なぜなら、赤の他人の行動が全て読み取れるのであれば、
この世の中はこんなにもギスギスしてはいないだろうし、
誰もが人間関係の機微に思い悩むこともあるまい。
となれば、あれは親子故に通じ合える感覚であって、
似通った思考に基づく似通った経験則から推察できたもの、
つまりは、これこそが私たち一族が連綿と紡いできた、
DNAのなせる業(わざ)なのかもしれない。

そこまで考えて、ここで私の脳裏にひとつの仮説が浮かんだ。

私の企んだ家出の狂言、
それが、父親から受け継いだDNAによって引き起こされていて、
所謂、父親にとって想定内の事象だったとするならば・・・、
私の父も遠い過去に、その似通ったDNAによって、
家出とまでは言わないまでも、私と似通った何らかの経験、
何かから逃げ出したことがあったのではないか、という考えである。

そうだ、そうに違いあるまい。
だからこそ 父は直感的に「本当は上京したくない私」を
一瞬のうちに感じることができたに違いない。

いや、待てよ・・
あれは、感じたのではないかもしれない。
そうだ、気づいたのだ。
いや違う・・・
そう、思い出したのだ!
間違いない。
父はあの日、私の狂言家出というフィルターを通して、
博士の言うところの「作られた記憶」の存在に気づき、
封印したはずの本当の過去を思い出したのだ。

まさに子は、つまり、父にとっての私は、
自らを、自らの人生を映し出す鏡だったのだ。

「は、博士、お願いがあるのですが・・・」

それまで自分の世界にどっぷりと入り込んでいながら、
突然向き直った私にちょっと驚いた風の博士だったが、
興味深げにこちらを見やった。

「なんでしょう?」

「先程の場面なんですが、もう1度見させてもらいたいのです。
できれば、か、角度を変えていただいて・・・」

「ほう、角度をね。
お安い御用ですが、どのように変えますか?」

私は、富士駅のホームを急ぎ足で私に近づく父を、
正面からアップで捉えて欲しい旨を博士に説明し、
数分の調整の後、私の希望する映像が画面に映し出された。

ベンチに腰掛けた私を見つけ、背後から急ぎ足で近寄る父。
しかし、父は、私の手前数メートルの位置で、ふと、歩を止めた。
父の表情が、焦燥から安堵、そして驚愕へとめまぐるしく変わる。
やはり父は、この場で自ら封印した過去を解き放ち、
そして、それを受け止めんと、自らと闘っているのだ。
一瞬の逡巡の後、父が私に向けた眼差しは、
全てを包み込むような慈しみに満ち溢れていた。
それは恐らくほんの数秒でありながら、
信じられないほどの深い過去との邂逅により自らと向き合い、
そして、覚悟したに違いないと信じるに足る表情であった。

《つづく》


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posted by maruzoh at 09:06| Comment(0) | ◆ワレナベニトジブタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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