やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年05月16日

ユメミダケ心中18 男女の転の壱


ユメミダケ心中 第18回 男女の転の壱


「あ、あなたが?
何が何でも、例え1人ででも?
今ここで、死ぬ?
そ、そう言ったらどうするか、ですって?」

恭子の台詞を反芻した征一は、細かく首を左右に振ると、
焦りを隠せずにへんな苦笑いを浮かべてみせた。

「そ、それって、あれですよね?
そう言ったらどうするかっていう、あくまでも仮定の話なんでしょ?
そ、そうですよね、違うんですか?
本当のとこ、どうなんですか・・・」

予測以上の征一の慌てぶりであった。
恭子が俯いたままほくそえんでいるように見えた。
その表情は、ここで征一を追い込むことで、
その本心が探りだせるに違いないと企んでいる計算高い笑顔であった。
恭子は視線を征一から外して、一言ずつ言い聞かせるように応えた。

「そ、そうよ。
仮定の話なんかじゃないわよ、現実の話。
だから、もうあんたになんか頼らない。
そもそも中年オタクなんかの力を借りるつもりだったなんて、
ははは、アタシも、どうかしてたんだわ。
あんたなんか必要ない、いらないのよ。
もうひとりで死ぬわ、ひとりで。
だってあんたったら、アタシの邪魔ばっかりするんだもの。
アタシの好きにさせてもらうわ」

そこまで言うと、恭子はまた視線を征一に向けた。
下から見上げる、値踏みすような視線だった。

「でも、そうしたらあんた、どうするつもりなのよ。
そうそう、責任取るって言ったわよね。
ははは、あんた2度も言ったわよ、責任取るって。
確かにキノコは食べないかも知れないわよ。
けどね、アタシ死ぬのよ、ここで。
自分の意思で。
で、あんたは、どう責任取るのよ。
ホントに取れんの?責任。
ふふふ、無理よ。
あんたなんかには、無理に決まってる。
今までの人生、散々逃げ回って、
何一つ責任なんか取ったことないあんたなんかに、
何が責任よ、チャンチャラ可笑しいわ。
大体、そんな軽々しく責任なんて言葉使うこと自体に腹が立つわ。
責任取るだの、結婚してくれだの。
プロポーズを装って命乞いすることを、責任だなんて言いっこないわ。
ホント、あんたってその場凌ぎの口先三寸なのよ。

どうするって言うの?
さあ、言ってみなさいよ。
いいのよ、尻尾巻いて逃げるんなら、勝手にどうぞ。
ふふ、恨んで化けて出たりしないから安心していいわよ。
サヨナラ、無責任男さん」

恭子の辛らつな言葉を浴びるごとに征一は、
その身を小さくさせていくような気がした。
そして、網の端に整列しているユメミダケに視線を移すと、
視線をそのままにして、意外にも落ち着いた素振りで、
ゆっくりと話し始めたのだった。

「あなたは、本気で死ぬ気でいるんですね?」

恭子が「今更なによ」という具合に黙って頷く。

「本当に、本気なんですね」

今度の恭子は、口の端を歪めて征一を睨んだままだった。

「わ、分かりました。
あなたの本当の心の中は、誰にも覗けませんものね。
あなたが本当は死にたくないだとか、SOSを発していただとか、
僕の感じていたことが、一人よがりの勘違いであったならば、
勝手にひとりで舞い上がってしまってました。
すみません、でも、悪気はなかったんです。

あなたが、本気であって、
どうしても今、ひとりででも死ぬと言うのであれば、
出会いの経緯やここまで来てしまったことを思えば、
この僕にはそれを止める権利なんか、きっと無いのでしょうね。

でも、これだけは信じて欲しいんです。
僕は、甚だしい勘違いをしていたかもしれませんが、
あなたに対して嘘はついていないつもりです。
先程のあなたに言わせるとクールファイブの二番煎じ、
陳腐な比喩の砂漠みたいな日常にしたって、
僕が常日頃感じていたそのままを伝えたつもりです。
自分でも不思議でしたが、あなたと分かりあえると思ったその瞬間から
急に死ぬのが怖くなってしまったのも本当です。

僕は、生まれて初めて恋をしました。
そして、そのあなたを救いたかった。
でも、それは無理となってしまった。

だから、僕の責任ってのは・・・
こういうことです」

征一は、箸で徐(おもむろ)にユメミダケを摘んだ。

「ここに4本のユメミダケがあります。
一時に食べれば、充分な致死量と思われます。
あ、あなたが僕の前からいなくなってしまうんなら、
やっぱりひとりきりになってしまうんなら、
僕はこのまま、眠って死んでいこうと思います・・・」

《つづく》


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posted by maruzoh at 18:11| Comment(0) | ◆ユメミダケ心中 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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