やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年04月26日

ユメミダケ心中12 男の承の参


ユメミダケ心中 第12回 男の承の参


征一が、ふうっと息を継いだ。
その気体は、科学的に言えばただの二酸化炭素の塊なのだが、
ずっと胸の中にわだかまっていた何かを
意志の力で押し出したかのようにも見え、
さっきまでつき続けていたぐずぐずな溜息とは、
明らかに異質なものであった。

「全て、うん、全部がお見通し、だったんですね」

癖なのか征一は、またぽりぽりと頭を掻きながら言った。
恭子だけでなく、征一もまた、なぜか知らぬが流暢に話せていた。
本人にも不思議だった。

「確かに、僕はあなたを欺いていました。
貴方の言うとおりです。
最初は死ぬ気なんか、全然ありませんでした。
利用してたと言うのが正しいかもしれません。
実は、母が死に掛けていたんです。
で、嫁を連れて来いと懇願されたんですが・・・
いえ、ははは、そんなこと言い訳にもなりませんよね。

でも、その母が急に死んでしまって、一人きりになってしまって。
その時、死んでもいいかなって心が揺らいで、
ここまで来たのは、嘘じゃありません。
ええ、本気でした。
なぜなのか、自分でもわからないんですけどね。

でも、貴方のさっきの言葉が・・・
貴方、言いましたよね、さっき。
保険をかけてた、そう、嫌われるように仕向けていたって。
どきんとしました。
僕も、おんなじ、だったかもしれないと思ったんです」

恭子が、少しだけ眼を大きく見開いた。
征一は、また、どきりとした。
それまで三白眼だとばかり思っていたけれど、
それは上目遣いにする恭子の癖がそう見せたのであって、
意外と、黒目が大きいんだなぁ、と征一は思った。

「僕は今まで、とにかく、周囲との係わり合いを拒んできました。
孤高の存在を気取っていました。
自分は変わり者だと、周囲と価値観の相容れない存在だと、
周りもそう思っていたし、僕もそう思っていました。
中年オタク、それも毒キノコオタクですからね。
でも、それは違うんです。
嘘なんです。
確かに毒キノコは好きです。
でも、それが何物にも優先する訳ではありません。
毒キノコというのは、僕が僕であるためのアイテムに過ぎないんです。
毒キノコ愛好家、毒キノコオタク、毒キノコマニア、毒キノコフェチ。
それは、そんな風な存在になれと、
僕が決めて、僕自身に言い聞かせてきただけなんです。
なぜかは、簡単です。
僕の存在理由なんて、そんなものしかなかったんです。
共通の土俵では、怖くって、勝負なんかできないんです、僕は。
それでも勝ちたいって思ってるなんて、
貴方の不戦敗より、よっぽど未練がましくって卑怯なんですよ・・・」

最後はフェードアウトするようにそう吐き捨てた征一は、
グラスに少しだけ残ったビールを飲み干すと
膨らんだ上着のポケットに手を突っ込んだ。
掴み出したのは、毒キノコ、ユメミダケであった。
征一は無造作にそれを4本七輪の網の上に放り出して、
恭子とユメミダケを交互に見つめると、ごくりと唾を飲み込んだ。
真っ赤になった練炭が、チリチリとユメミダケを責め続けている。

《つづく》


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posted by maruzoh at 22:14| Comment(0) | ◆ユメミダケ心中 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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