やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年04月23日

ユメミダケ心中11 女の承の参


ユメミダケ心中 第11回 女の承の参 

征一には、恭子の言っている「アタシは馬鹿ではない」という言葉が、
いったい何を指し、何を意味しているのか直ちには分からなかった。
しかしながら、恭子を欺いているいくつかの重大とも言える事実、
すなわち思い当たる節が、母親の件を含めて複数件あるのも確かであった。
であるからこそ、征一はその心臓をどきりとさせたのであるが、
そのいずれであるかを特定するために遠回しに質問をし、結果ぼろを出し、
墓穴を掘ることにならぬよう、暫く恭子の出方を伺うことに決めた。

こちらを上目遣いで見たまま黙して語らぬ征一に恭子が痺れを切らした。

「ねえ、あんた」

「は、はあ」

「何を考えてアタシみたいなのに声かけたのよ」

征一は恭子の質問の意図が分からなかったが、黙り続けるのも何であるし、
ここは適当に話を合わせるしかないと覚悟を決めた。

「あ、あの、大人しそうだけど、誠実そうで・・」

「ふん、何言ってんのよ、あんた」

恭子は鼻で笑って続けた。
意外なことに、なぜか滑舌は悪くはなくなっていた。

「あたしの何処を取って誠実って言葉が出てくんのよ。
大体、あの書き込みやメールから誠実さなんて、
欠片だって読み取れるはずないじゃない。
あんたはいつだってそうだった。
アタシを持ち上げるのよ、こんなアタシを」

「・・・・・・」

征一は、口を開けかけたがすぐに閉じた。
言葉は音になる前に喉の辺りに引っ掛かったままだった。

「こんなアタシみたいな女によ。
なんでアタシみたいな何の魅力もない女に、
あんたはそんなに媚びへつらわなきゃならないの?
美人じゃないし、スタイルも悪い、性格もこんな女によ。
不自然よ。
どう考えたっておかしいわよ。
あんたね、いったい、何を企んでるのよ」

「い、いえ、そんな、企んでるだなんて・・・」

「じゃあ、何だって言うのよ。
いい?
さっきも言ったけど、アタシ、丸っきりの馬鹿じゃないのよ。
本当はあんたに死ぬ気がなかったことなんて、
あんたの今までの態度を見てれば分かるわよ。
こんなアタシのお付き合いの為にこんなど田舎までやってきて、
したくもない心中をする風を装って。
それが何?
お気に入りのキノコを見つけてからと言ったら、
嬉々としてその効果を楽しみにしたりしてるし、あんた、矛盾だらけよ。
ねえ、本当は何がしたいのよ?
心中する気、あるの?ないの?」

征一は、上手く答えられなかった。
母の病床に恭子を連れて行こうと企んでいたのは事実であったが、
母が亡くなった後も恭子と連絡を取り合ったのがなぜなのかが、
征一自身にも正確な理由付けができなかったのである。
ましてや、心中しても良いとさえ思った理由は何だったのだろう。
ぼおっと考え込んでしまった征一に恭子は尚も続けたが、
その声はトーンがやや下がっているように聞こえた。

「変な話だけどアタシね、自分自身に保険掛けてたのよ」

「ほ、保険って生命保険ですか・・・」

「違うわよ、本当の保険って意味じゃなくって、
ううん、そう、言葉の綾ってヤツよ。
アタシね、人に好かれないように好かれないようにって、
そんな風に振舞ってきたのよ、今まで、ずっと。
例えばね、こんな風にしたら好感度が得られるだろうって分かったら、
敢えてそれとは逆の行動をしてきたのよ。
なぜだか分かる?」

「い、いえ・・・」

恭子の話の内容は、征一には全く理解できなかった。
ただ、この時の恭子は、今までになく哀しげだった。
トーンが更に下がる。

「好かれようと努力してもね、好かれなかった過去があったのよ。
さんざん努力したわよ、まだ若い頃にね。
でもそういうのって、やっぱり傷つくじゃない、こんな女だってさ。
そう、傷ついたのよ、かなり。
でね、この技を編み出したって訳。
だって自分から嫌われるように仕向けたんなら、
好かれないのは当たり前って、自分に言い聞かせられるじゃない。
傷つかなくって済むじゃない。
勝ち負けで言うと、不戦敗だけどね。

だからアタシ、あんたにも随分と酷いこと言ってきたわ。
ホント、傲慢で理不尽に振舞ってきたわ。
でも、あんたは、なぜか優しかったのよ。
ねえ、なぜなの?
どうしてなの?」

恭子のその言葉によって頭の中から何かが、
胸の辺りにすとんと落ちてきたような、
そんな気が征一にはしていた。

《つづく》


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posted by maruzoh at 09:21| Comment(0) | ◆ユメミダケ心中 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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