やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年03月19日

ユメミダケ心中4 男女の承の壱


ユメミダケ心中 第4回 男女の承の壱 


世間一般な見方、つまり、その人となりを客観的に見るならば、
征一は多少気が利かなく、鈍そうではあったが、
恭子の言うように独善的でもなければ、傲慢でもなかった。
恭子が癇に障ると感じている、所謂「イエスバット法」の受け答えも、
実際には滑舌が悪い上に口篭る恭子の口調が聞き辛かったり、
余りにも恭子の意見が自己中心的であったのが原因で、
むしろ、恭子を傷つけまいと思いやる彼の気持ちが、
不器用ゆえに、そう印象づけさせてしまったのではないかとすら思える。
少なくとも征一は、悪い人間では無い様に思えた。
しかし、だからと言って、この男と友達になりたいかと問われれば、
首を捻ってしまうのも事実であった。
人間の善悪と、人間的な魅力の有無は別問題なのである。

一方、恭子は、自身が理想として思い描くシニカルな自分の様に、
完全に世の中を斜め上から見渡せているわけでもなく、
また彼女には、それだけの器も、技量も、絶望すら無い様に見えた。
だからこそ、今回ばかりでなく過去においてでも大きな決断を迫られると、
自らに対する欺瞞、つまり自信の無さや不安が滲むように出てしまい、
例えば先程のように、自分に問いかけるという手段を用いて
重箱の隅をつつくような最終点検確認、つまり安全装置の如き作用が、
知らず知らずの内に働き始めるのだった。

そういった意味では、妙に落ち着きを見せている征一に対して、
恭子があれほどの嫌悪感を募らせるのは、
自らが生き残るための本能なのかも知れない。
坂の途中で征一が、今、感じている恭子の「生」は、
ひょっとしたら恭子からの無意識のSOSなのではなかろうか。

「そ、そこに、腰掛けたらいいよ」

ようやく追いついた恭子に征一は、
枯れ草の中、ぽつんと取り残されたような切り株を指差した。
その言葉が聞こえない訳ではないのだろうが、
恭子は暫くそのまま突っ立って、無言で沢を見下ろしていた。
しかし、やがて征一から顔を背けたまま、切り株に腰掛けると、
太ももや脹脛(ふくらはぎ)の辺りをしきりにさすり始めた。
立ち止まり足音が無くなると、沢を流れる水の音に加えて、
足に響くような重低音が聞こえているのに恭子は気づいた。

「滝の音ですね。もうすぐだ」

征一がこんなに嬉しそうなのは、滝を楽しみにしているのだろうか。
それとも、この苦行とも言うべき無意味な行軍が、
終わりに近づいていることを喜んでいるのだろうか。
恭子には、分からなかった。

(この男は、最初から死ぬ気など、毛頭無いのではなかろうか?)

確かに征一には、悲愴な決意など微塵も感じられず、
恭子の懸念も、あながち的外れとも言えなかった。
そんな、雰囲気は、確かにあった。

何かを見つけたのだろうか?
征一は暫く屈み込んで盛んにごそごそとやっていたが、
はっと気づくとふいに腰を上げて振り返ると恭子を見やった。
ところが、恭子が返事もせずに鼻を膨らましているのに気づいて、
恐る恐る声を掛けてみた。

「た、滝、やめときます?
多分、もうすぐだと思うんだけど・・・」

間髪いれずに、恭子が応えた。

「行くわよ」

恭子の言葉は、怒気を孕んでいた。
自分でも不思議なくらい、感情的だった。
征一は、今まで以上の「生」を恭子から感じながら、
腰掛けている恭子に手を差し伸べた。
躊躇もせずに、ぐっと掴んだ恭子の手は、汗ばんでいた。

《つづく》


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posted by maruzoh at 15:49| Comment(0) | ◆ユメミダケ心中 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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