やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年03月13日

ユメミダケ心中3 女の起


ユメミダケ心中 第3回 女の起

滝への沢沿いの細い坂道は、もう夕暮れの中。
本当のことを言うと、その女、根本恭子は、
さして見たいわけでもなかった滝への散策への誘いに
ほんの気まぐれで同意してしまったことを、ひどく後悔していた。
もともと運動は大の苦手であったのだが、
それにしてもきつい勾配がこんなに続くとは、思ってもいなかったし、
その癖、前を行く男は、時折振り返るばかりで、
自分のことを気遣ってくれる気配など微塵もないのだ。
むしろ、振り返った時に小首を傾げるその仕草は、
坂の下から喘ぎながら見上げる恭子からすると、
「もっとサクサク歩けないのかなぁ・・・」と、
謂れのない不満を訴えられているかのように思えてならず、
その度に恭子は、更に後悔の念を募らせ、鼻を鳴らすのであった。

恭子は、今日初めて会ったこの極めてファッションセンスの悪い男が、
流行や外見に頓着がない、或いはセンスがないなどと言うよりも、
むしろ、根本的に世間の間尺に合っていないように思えて仕方がなく、
それは、この男にはある種の感覚が欠落しているのではないかという、
そんな疑念に代わっていくのを感じていた。
しかも男は、不思議とつまらないところに拘る節があって、
話の途中は一方的に話させるばかりでなかなか意見を言わないくせに、
さあこうしようという最後の最後の段で、決まって詳細な説明を求めた。
男から漂う偏執的な、所謂、オタクっぽい陰気なオーラが、
そんなところからもじんわりと感じられるのである。
加えて言うならば、先ほどの坂の上でのような
男の異性に対する挑戦的にさえ映る態度から想像するに、
恐らく、男にとってフェミニズムなどという言葉などは、
知識としての外来語の1つに過ぎないのであって、
よもや実践する為のものだとは、思いもよらないのだろう。

2人は知り合ってからまだほんの1ヵ月であり、
しかも、これまではメールやコメントでのやり取りばかりで、
実際に会ったのは今日が初めてであるのだが、
恭子は、これだけ当初の雰囲気と現在の態度の異なる人物は、
珍しいのではなかろうかと考えていた。
出会いの頃こそ恭子の全てを受け止めてくれるような寛容さに、
男に対しひょっとしたらとの期待があったものの、
ある日を境にその寛容さに陰りが見え始めた。
すなわち、かつてのやりとりにおいては、
「そう、そのとおり」と恭子の話を受け止めてくれていたのが、
男は「そう、そのとおり」と肯定しつつ「でも、しかし」と、
結局は切り替えし反論する台詞が示すように、
寛容に見えて実際には、随分と自分勝手に変貌していったのである。
しかもそれは、自分に都合のいい解釈に終始している上、
必ずしも正確な裏づけのある意見などではなかった。

つまらない。
ただのつまらない中年である。

ただし、それだからこそ、
こんなつまらない男であるからこそ、
この男は普通の恋愛も出来なかったのであって、
結果、出会い系サイトの如きで私のような女と知り合い、
更には、その口車に乗せられて、こんな山奥までついて来た挙句、
2人して、大した理由もなく、今夜、死のうとしているのである。

しかし、恭子は、思うのだった。
死ぬことは、恭子自身が望んだことであり、
それに対する恐怖や後悔は、既にない、つもりだった。
ところが、心中の相手に関しては、それまで恭子は、
ただの付き添い程度にしか考えていなかったのだが、
その時が近づくにつれ、徐々に相手の男の人間性が、
どうにも気になってきてしまったのである。
なぜ我が人生の終焉に心中を選んだのかを考えるに、
ある思いが恭子の心に充満していくのだった。

(本当に、この人でいいのだろうか?)

もう1度そう考えた時、ふいに、男が振り返った。

「大丈夫ですか? ちょっと休みましょう・・・」

男の思いがけない言葉に、恭子はたじろいだ。
この男でもこんな台詞が言えるのか、と思ったが、
だからと言って、この男が自身の最期に相応しいとは、
正直、到底思うことは、できはしなかった。

《つづく》


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posted by maruzoh at 16:08| Comment(0) | ◆ユメミダケ心中 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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