やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
   maruzoh live.jpg

名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年03月10日

ユメミダケ心中1 男女の序


ユメミダケ心中 第1回 男女の序

その事件のあった部屋の仲居に言わせると、
やはりあの二人は、最初から他のカップルとは違って、
初々しさと言うよりむしろ、他人行儀に近い印象を受けたとのことだった。
とは言え、鄙びた田舎宿のそうそうはないような事件においては、
当事者の当初の記憶なんてものには、
事件後に得た知識の尾ひれが付くのはよくある話で、
実は、本当ところ、ほとんど印象というものの与えにくい、
男女とも実に地味な2人連れだった。


秋であった。
10月のとある平日であった。
鉱泉の出る山間(やまあい)の田舎宿には、
ちょっと早い紅葉を求めて泊り客が、ちらほら。
そのほとんどが悠々自適のお年寄りたちで、
それぞれ麓の町から日に数本の乗り合いバスに揺られて来るのだが、
その地味な一組の男女だけが、
随分と年式の古い軽自動車を宿の駐車場に止めていた。
若いカップルと足立ナンバーの軽自動車。
これが、どうにも、不釣合いなのであった。
確かに、今では軽自動車も随分とお洒落になって、
ワゴン車などが若い世代にも流行だと聞く。
しかし、この軽は、そんなお洒落とは縁遠い代物で、
錆の浮いたような、言わば走ればいいという様相なのだ。
大概、このくらいの年の、しかも都会に暮らす人間には、
クルマやファッションは、大きな関心事の一つであるだろうに、
この男女には、そう言ったものが欠落している、気がした。

部屋に通された2人は、出された丹前には袖を通さず、
トレーナーにジーンズ姿のまま、暫くの間は茶も淹れずに、
窓際でぼんやりとしていたという。
2人の視線の先、山の西側の斜面には、
僅かではあるが、緑の葉に混じり随分と気の早いモミジが、
色づいた葉を風に揺らしていた。

「散歩でも、行きましょうか」

男が、ふいに、振り返ったので、女と視線がぶつかった。
女は、しばし無言であったが、
ゆるゆると立ち上がったところを見ると、
男の誘いに同意したようで、短く「行きましょう」とだけ言うと、
傍らに置いたピンクのポーチを手にした。

地味ゆえ目立たず、後付けの印象であったとは言え、
確かにこの2人、仲居の言ったとおり他人行儀そのもので、
もし誰かしらが注意を払って2人を見ていたならば、
とても彼らが鄙びた旅館に来る様な間柄でないことは、
火を見るより明らかであった。
そんな2人は、宿の玄関右手の沢沿いの細い道を
小さな滝があるという看板に案内されて、
1列になって、ゆっくりと歩を進めていったのだった。

《つづく》


 ※本サイトの「お取り寄せ救世主」は、アルファポリス「webコンテンツ」、
にほんブログ村「現代小説」ランキング、人気ブログランキング「現代小説」に参加しています。
宜しければ、クリックお願い致します。

 人気ブログランキングへ  にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へ


posted by maruzoh at 15:08| Comment(0) | ◆ユメミダケ心中 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

検索
 

title.gif
maruzohは、アートビリティ作家さんを、応援します!

●ご連絡先● 〒165−0023 東京都中野区江原町2−6−7
社会福祉法人東京コロニー アートビリティ事務局内
TEL 03−5988−7155/FAX 03−3953−9461
●営業時間● 平日 9:00〜17:20 / 土・日・祝日 休業日