やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
   maruzoh live.jpg

名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年02月20日

お取り寄せ救世主 第25回


お取り寄せ救世主 第25回


「父さんはね・・・」

飯山君のその言葉が聞こえたわけではないのだろうけれど、
さっきまで競うように吼えていた犬の遠吠えが、止んだ。

「母さん以上に優しかったんですよ。
でもそれは、今、思うとなんですけれどね」

さっきまで父、母と言っていたのに、
知らず知らず母さん、父さんと言ってしまったのに気づいたのか、
飯山君は照れたようにイヤミのような髪型の頭を掻き、
フケが一片、ゆあーんとしたテーブルに舞い降りた。

「僕にとっての父は、あの父だけですよ。
僕を、本当に可愛がってくれた、あの大工の父です、宇都宮の」

「・・・・・・・・・・」

私たち夫婦は、ただ、黙るしかなかった。

「ほら、テレビのドラマなんかで、あるじゃないですか。
瞼の父とか、父を訪ねて三千里とか。
遺伝学上の、DNAの根源としての父親に会いたいとかって。
聞くも涙、語るも涙みたいな・・・
でも、僕、そんなこと思ったこと無いんです。 
本当に、一度だって、無かったんですよ」

瞼の父はまだ許せるとして、原作に反して三千里も父を訪ねるなと思うのだが、
私は、飯山君が頑なに、そこまで両方の父を庇うほどに、
それが彼の、本心の裏返しなのではないかと思ってしまうのだった。

「さっきも言いましたが、僕がその話を聞いたのは、
2年前の三回忌の時なんです。
だったら仮に、
僕が何らかの行動を起こそうとしたって、もう手遅れなんです。
だって、23年も前の話なんだし、母さんはもういないんだし、
今、何かが明らかになったって、
僕の自己満足だけで何の意味も成さないでしょ?
なんたって、全てを宇都宮の父が、あの父が、全てを、
23年分も被ってくれてるんですからね。
もう、そこで終結してる訳でしょ?
僕が、それを覆そうだなんて、出来っこありませんよ」

「・・・・・・・・・・・・・」

「いえ。
それだけじゃないんです。
父は、知らないんです、マジに。 本当に。
母は、頑なに、何も話さなかったらしいんです。
父が、どれだけ、どれだけ、どれだけ問い詰めても、
母は、最後まで、その事実を認めなかったそうなんです」

「認めなかったって・・・」

「そ、それ、どういうこと?」

私たち夫婦の問いに、飯山君は頷いて、ゆっくりと答えた。

「母は、
このお腹の子については、
全く身に覚えがないって、
真顔で父に言い続けたんだそうです」

「ふぇっ?」 「ふぉっ?」

私たち2人は、同時に息を飲んだ。

「そ、それって、どういう意味?」

妻が思わず、また、身を乗り出したので、
テーブルがゆあーんと揺れて、飯山君もまたその反動でゆよーんと揺れた。
彼は、揺れながら応えた。

「そのまま、聞いての通りです。
母はこう言ったそうです。
確かに妊娠してはいるけれど、
それに至るような行為は、一切した覚えがないと。
出会った当初も、結婚後も、更には、僕を出産した後まで、
一貫して、徹頭徹尾、極めて真剣に、揺ぎ無く、
母は、父に言い続けたんだそうです、さっきの台詞を・・・」

「だ、だって、そんなこと・・・」

妻の言葉を、私が継いだ。

「そ、そんなのあり得ないよ。
科学的にも、まるで考えられない。
実際、とても信じられるとか、そういったレベルの話じゃない。
でも、まさか、君のお父さんは、それを鵜呑みにして、
そんな馬鹿げた話を信じてたとでも言うのかい?」

そんな私の質問には、流石に飯山君も笑ってしまった。

「ま、まさか、そんな・・・。

僕は生前の母に対する父の態度を、
特別な思いを持って見ていた訳ではないですし、
ましてや、分析してた訳じゃありませんから、はっきりしたことは言えません。
でも、
過去の記憶を手繰って、
それを繋ぎ合わせてみるとすれば、
父は、信じようと、努力していたような、
今となっては、そんな気がして仕方ないのです」

妻は、テーブルの天板をしっかり掴んで、ゆあーんとした揺れを止めた。

「お父さんは、信じようと、努力を、していた?」

暫くぶりに遠吠えがひとつ、換気扇のプロペラを震わせた。

《つづく》




☆アルファポリスに挑戦☆
アルファポリスさんのランキング「Webコンテンツ」に挑戦します。「うふふ」とか「ほろっ」とか「なるほど」と感じたら、押してくださいね。

 現代小説 お取り寄せ救世主

posted by maruzoh at 23:00| Comment(0) | ◆お取り寄せ救世主 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

検索
 

title.gif
maruzohは、アートビリティ作家さんを、応援します!

●ご連絡先● 〒165−0023 東京都中野区江原町2−6−7
社会福祉法人東京コロニー アートビリティ事務局内
TEL 03−5988−7155/FAX 03−3953−9461
●営業時間● 平日 9:00〜17:20 / 土・日・祝日 休業日