やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年01月29日

お取り寄せ救世主 第15回


お取り寄せ救世主 第15回


目の前に起きている事象に心底夢中になり、
興奮の極みに達するとなぜか私の妻は、
一番身近な人物の背中を叩くのである。
通常の女性なら「あらいやね」とか言いながら色気を孕んで、
男性ならば「やったな」とか逞しさを醸し出すその仕草も、
妻にかかってしまうと、最早、危険極まりない悪魔の所業と化している。
バンバンバンバンという重低音の音源に目を移せば、
キューセーシュの飯山君のか細い背中をその丸太の如き太い腕で、
あたかも競輪のラスト1周を告げる銅鑼、ジャンよろしく、
真っ赤な顔に白眼で狂ったように、まさに一心不乱に連打している。
その姿は、申し訳ないが我が妻ながら、とても常人とは思うことが出来ない。
一方、何の予備知識も無いままいきなり背中を叩かれ、
一向に止む気配のないまま叩かれ続ける飯山くんは、誠、いい迷惑である。
なんと彼は、むせにむせ返って咳が止まらず喉をヒューヒュー言わせて、
半ば呼吸困難に陥り真っ青な顔をしているではないか。
下手をすればこれが今後の健康被害に及びかねない恐れもあり、
ここは私が、夫と言う立場上、早急に連打を静止させねばなるまい。
私は、叫んだ。

「た、民子、止めろ!
お前、飯山君を見ろよ!
ぐ、ぐったりしてきてるじゃないか・・・」

口元だけが馬鹿笑いをして、白目を吊り上げた、
まるで丸々と太った九尾の狐のような狂気の表情の妻が、
私の絶叫に、ふと、我に返った。
真っ赤な妻は振り上げた手を虚空で静止させて、
その手と、キューセーシュの飯山君の真っ青な顔を
「大切なメシヤを誰がこんなにしたの?まさか、あたしぃ?」
という具合に、さも驚いたようにして、交互に見比べた。
しかし、この顔色の、赤と青のコントラストの妙と言ったら・・・

「げほ・・・、けほほ・・、けほけほ・・・」

私は気付けにと、グラスに満たした冷たい水を2人に薦めた。
それを一気に飲み干した妻は、落ち着きを取り戻したものの、
被害者の飯山君は、暫く、あのテーブルに突っ伏したまま
ゆあーん、ゆよーんという揺れにまかせたまま起き上がれない。

「ごめんね、メシヤマちゃん。
あたし、夢中になると、どうも周りが見えなくなっちゃうみたい。
相当叩いちゃったみたいだけど、大丈夫?」

「はひ・・・」

思いがけずにやさしそうな言葉にキューセーシュの飯山君は、
やや赤みを取り戻し青から紫へと変色した顔を上げたが、
メシヤマちゃんって、なによ、それ?
さっきまでアンタ呼ばわりされていたはずの飯山君は、
ついに妻の中での救世主当選確実マークの点灯により
どうやら、対応並びに処遇が、三段跳びに改善されたようである。
しかし、だからと言って知り合って間もない、
しかも、恐れ多くも救世主と崇め奉ろうとする相手に対して、
いきなりあだ名にちゃん付けという、この図々しさは、如何なものか。
馴れ馴れしいにもほどがあるだろう。
そんな私の思いは、当然妻には伝わらず、
妻は相変わらずの独善的かつ自己中心的な考えを、
キューセーシュの飯山君に説き始めた。

「メシヤマちゃんもさあ、
今はまだ、なり立てほやほやの救世主な訳じゃない?
だから、当然、教義だとかなんてまだ無いわよね。
で、やっぱり必要なのは、奇跡だと思うのよね、奇跡。
この奇跡でね、がばっと世間の耳目を集めるわけよ。
ねえ、わかる?
ほら・・、なんてったっけ?
40人の盗賊みたいな名前の、アフロの人。
インドかどっかの、ほら、アリババ・・・、じゃなくて・・・」

「インドの聖者、サティヤ・サイ・ババだろ?」

私は、敢えてうんざりしたように言ったが、妻は相変わらず知らん顔だ。
しかし、いくらなんでもアリババとサイ・ババを一緒にしたら、罰が当たりそうだ。

「そうそう、サイババよ、サイババ。
手から灰とか出したりすんでしょ?あの人」

「は、はあ。灰、ですか?
でも、僕、今までそんなの出たことありません・・・」

妻がにやりと笑う。

「灰なんて出したところで2番煎じ、駄目よ。
それに、灰なんて、のべつ出てきたところで1円にもなりゃしないわよ。
もう、部屋の掃除が大変になるのが関の山よ。
ちっとも目立ちゃしないし、時代に即してないわ。
今風のやり方、しなくっちゃね。
現代人は、関心があるものへの具体的なご利益、これが1番なの。
特に女性は、ね。
で、そこでね、このあたしがね、
例えば、ダイエットを始めとして、金運、探し物なんかの
モニター兼広告塔になる訳よ。
で、あのテレビショッピングの番組みたいに使用前、使用後とかしてさ、
世間にアプローチするって、このアイデア、どう?」

随分と横幅と重量のある広告塔があったものだ。

《つづく》




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 現代小説 お取り寄せ救世主

posted by maruzoh at 08:45| Comment(0) | ◆お取り寄せ救世主 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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