やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
   maruzoh live.jpg

名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年01月21日

お取り寄せ救世主 第11回


お取り寄せ救世主 第11回


「あ、もしもし、あの、キューセーシュです」

えーっ?なになになに?
キューセーシュですって・・
いつも電話、こんな風にして取ってんのかい?
言っちゃ悪いが、神様なめてると、仕舞いにゃ罰当たるぞ。

「はい、はい、覚えてますよ。
あの、武藤さん・・ですよね。
ええ、ええ、はい、はい」

私はキューセーシュの青年イヤミ君の電話の応対に正直驚いたが、
妻は、当たり前の様に、平然とそれを聞き流している。
救いを求める電話の謎は解明されていないものの、
私は未だに、この貧相な青年がとても救世主だとは思えないし、
彼だって実際、さっきからそれを否定していたのだ。
それでも妻は、まだ、こいつが救世主だと信じているのだろうか?

「えっ?
そうですかぁ。本当に?
へーっ。ミーコちゃんがねえ、
ええ、それは良かった。
いえいえ、大したことじゃありませんから・・・
いえいえいえ、はい、わざわざありがとうございます」

武藤敬子さんからの電話は、断片的に聞いただけでも、
私にもある程度の内容は、分かったような気がした。
彼は少し照れ笑いを浮かべながら通話ボタンをを切り、
携帯をパタンと閉じると信用を落とした私には一瞥もくれずに、
テーブル席でデカ長のようにでんと構える妻の方に歩み寄り、
迷い猫のミーコに関する捜索結果を報告した。

「武藤さんちの家出したミーコちゃん、
さっき、無事見つかったそうです」

「そりゃあ、良かったじゃない。
で、今、あんた、お礼言われてなかった?
相談された時に、何か、してあげたの?
その武藤さんと、ミーコちゃんとやらにさ」

彼は、歯を顕にしてへへへと自嘲気味に笑うと、
照れ臭そうにテーブルクロスをちょっと引っ張って、
また、妻の嫌いな「のの字」を書き始めた。

「そ、それが、あの、馬鹿みたいな話しなんですけど、
武藤さんが、あんまり真剣にミーコちゃんを心配していて、
あの、なかなか電話を切ってくれなくって、
丁度、僕、バイトに出なきゃいけない時間だったもんですから、
あの、適当に・・、
その、北北東の方角を探しなさいって、
口から、でまかせ言っちゃったんです。
いや、あの、悪いとは思ったんですけど・・・」

「えっ?
で、もしかして、北北東にいたの?
ミーコちゃん・・・」

妻が、いきなり身を乗り出したものだから、
驚いたキューセーシュの青年イヤミ君は、
のの字を書いていた体勢のまま、
人差し指1本を掲げて半歩ほど後ろに飛び退いた。

「ええ、あの、こういうのなんて言うんでしたっけ?
瓢箪から駒・・で、いいんですか?
武藤さんちの北北東の見当に、空き家があるらしいんですが、
それがどういう拍子かミーコちゃん、
そこの物置から出られなくなっちゃってたらしいんです。
武藤さん、そりゃあ、喜んでましたよ。
あ、笑っちゃいけないんですけどね。
いやあ、こんなことも、あるもんなんですねえ」

妻の眼が、キラリと妖しく光ったのを、私は見逃さなかった。
恐らくここから、妻の独善的な論理が展開されそうな予感がする。
妻の眼は見開かれて、分厚い唇の端が、キューッと吊り上がり、
息を吸い込んで、さあ、これからと言う時だった。

「唄はちゃっきり節 男は次郎長
花はたちばな 夏はたちばな 茶のかおり〜♪」

また、着信だ。
相談の電話らしい。
肩透かしを食らって、つんのめりそうになっている妻を尻目に、
彼は、ディスプレイの表示を見て、
憂鬱そうにふうっと溜息をついてから、通話ボタンを押した。

「あ、もしもし、キューセーシュです。
ええ、わかってますよ、佐々木さんですよね。
はいはいはい。
この間は、お金貸してあげられなくて、ごめんなさいね。
その後、景気はどうですか?
ええ、ええ、ええ。
えっ? 何ぃ?当たったって、何が?
ええっ? 冗談でしょう? 冗談。
ええっ? だって、そんな、馬鹿なこと・・・」

只事でなさそうな電話の内容に、あのものぐさ極まりない妻が、
テーブルに片膝を乗り上げるほどに身を乗り出したのだが、
眉間に深い皺を寄せたキューセーシュの青年イヤミ君は、
その恐ろし気な姿にまるで動じることはなく、
取り憑かれたように、ひたすら「のの字」を高速で書いている。
妻を乗せたテーブルが、ミシミシ軋んで、呻き声の様に苦しげだ。

《つづく》




☆アルファポリスに挑戦☆
アルファポリスさんのランキング「Webコンテンツ」に挑戦します。「うふふ」とか「ほろっ」とか「なるほど」と感じたら、押してくださいね。

 現代小説 お取り寄せ救世主

posted by maruzoh at 08:36| Comment(0) | ◆お取り寄せ救世主 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

検索
 

title.gif
maruzohは、アートビリティ作家さんを、応援します!

●ご連絡先● 〒165−0023 東京都中野区江原町2−6−7
社会福祉法人東京コロニー アートビリティ事務局内
TEL 03−5988−7155/FAX 03−3953−9461
●営業時間● 平日 9:00〜17:20 / 土・日・祝日 休業日