やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年01月18日

お取り寄せ救世主 第9回


お取り寄せ救世主 第9回


「あったぞ。
これだろ?チラシって」

黄色いチラシを握り締めて狭いダイニングに戻った私の視界に、
神妙な顔つきでキューセーシュ君を睨んでいる妻と、
その体躯と視線に圧倒され、脅えて、後退りしがちな彼が、
テーブルを挟んで微妙なバランスで対峙している光景が飛び込んできた。
2人は、はっとしたように我に帰ると、
なるで機械仕掛けのように私の方に向き直った。

「ほら、この黄色いの」

私は、顔の前でそれをひらひらさせて見せた。

「そうそう、それよ、それ!
黄色に、赤の印刷、間違いないわ。
3つのお約束って、あるでしょ?」

妻は、私の手から引っ手繰る様にチラシを奪うと、
彼に対する先般からの不遜かつ傲慢な態度を180度改め、
恐らく自分では目一杯愛想良くしているつもりなのだろう、
チラシとキューセーシュの青年イヤミ君の顔を交互に見つつ、
「そうよ、無料なのよね」だの、「ポイント貯まるのよね」だのと
キャッキャ言いながら彼に同意を得ようとするのだが、
当のキューセシュ君は、自分の倍以上も重量があり、
しかも、折々態度が豹変する理解しがたい存在の妻に、
どうしても馴染むことが出来ないらしく、
引きつった顔面の左の頬、耳たぶ近くを小刻みに痙攣させて、
何も応えられずに、相も変わらずにへどもどしている。

そんなキューセーシュ君に、ついに、妻が、痺れを切らした。

「あんたさあ。
ここで、はっきりとウチの人に、
初回は無料ですって、断言してくれない?
それと、料金表かなんか、ある?
高いと、クーリング・オフって言ってるのよ、ウチの人。
あんたも、そうなったら後々面倒でしょ?
どう?ないの?料金表。
ないんだったら、一筆書いときなさいよね、いい?」

これから信心をし、功徳を得ようと心に誓った救世主に対して、
あんた呼ばわりして、料金表を請求した上で、
更に、お布施を値切ったりするのは、
世界広しと言えど、ウチの妻くらいのものかもしれない。
全く、尊敬に値する図々しさだ。

「あ・・あの、あの・・・」

「なによ」

「あ、あの、えーと、あのぉ・・・」

あぁ、駄目だ。
キューセーシュの青年イヤミ君の十八番、あのあのが出てる。
これが始まってしまうと、なかなか物事が前に進みにくくなり、
無駄な時間を浪費するのは、先刻の廊下で学習済みである。
夜も更けた事であるし、証拠の品も手に入れた。
ここはひとつ私が間に入って、事態の収拾に努めることにしよう。

先程も述べたが、この一連の謎に対して、私には、ある仮説がある。
当たり前と言えば、ごく当たり前の推理なのだが、
まず、これしか正解はないだろう・・・
この際私は、、気短かな妻と、気弱なキューセーシュ君のためにも、
この謎解きの、結論からズバッと告げることにした。

「違うんだよ、民子。
僕の仮説が正しければだな、
このキューセーシュ君は、いいか?
その黄色いチラシの誤植、
つまり、電話番号の間違いの犠牲者なんだよ」

妻が、訳が分からないという顔をしている。
キューセーシュ君も、同じような顔をしている。
私は、キューセーシュ君に向かって、説明を続けた。

「この電話番号は、確かに君のイエデンの番号だろ?
絶対、そのはずだ。
でも、君は、こんなチラシなんて知らないと言ったね。
君に救いを求めてきた電話ってのは、誤植、
つまり、この教会のミスプリントによる
ただの間違い電話だったってことなんだ」

妻が、えーっ、それだけなの?って、顔をしてから、
数秒後にお世辞使って損したって顔に変わっていった。

「どうだい?ご名答、だろ?
これで君も、訳のわからない電話の理由も分かったし、
ウチも無駄な出費をせずに済んだってことで、
まあ、お互いに一件落着という訳だ」

私は、黄色いチラシを妻から奪い返すと、
チラシの一番下、049−×××―××××を指して、
キューセーシュの青年イヤミ君の顔を覗き込んだ。
彼は、暫く電話番号を見つめた後、
また、あの・・と1度だけ言ってから、顔を上げて

「も、申し訳ないんですが、
僕んち、イエデン、ないんです。
電話は、毎回、僕の携帯に架かってくるんです・・・」

と、私に言った。
あんなに自信たっぷりで他を圧するような台詞で
名探偵を気取ってしまった私の目の前が、
一瞬で真っ白になった。五里霧中。

《つづく》




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 現代小説 お取り寄せ救世主

posted by maruzoh at 23:14| Comment(0) | ◆お取り寄せ救世主 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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