やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年01月16日

お取り寄せ救世主 第7回


お取り寄せ救世主 第7回


全く私らしくも、ない。
あまりにものめり込んで、冷静さを失ってしまい、
随分と感情的になってしまったようだ。
ふと冷静になると、私とキューセーシュの青年イヤミ君は、
夜10時過ぎのしんと静まり返ったマンションの廊下で、
チェーンの掛けられた半開きのドア越しに、
怒気を孕んだ声で謂れのない説明を求めたり、
あのあの・・と、もじもじした末に情けなく言い訳したり、
頭ごなしに、これも謂れのない怒声を浴びせて凄んでみたり、
そして遂には、絶叫して嗚咽を漏らしたりと、
甚だ至極、ご近所迷惑の限りを尽くしてしまったことに、
遅ればせながら、私は、ようやく気がついたのだ。

これ以上2人が、公的スペースで無意味な抗争を継続し、
近隣の方々の怒りや恨みを更に増幅させるのは、
決して得策とは言えないと判断した私は、
チェーンを外すと、おいでおいでをして、彼を招き入れた。

「お・・、お邪魔します・・・」

電話では、意味不明の丑の刻参りで妻に脅迫され、
訪問すれば、その夫の私にいきなり恫喝されたにも拘らず、
その情け無用の悪鬼の如き輩の占有する領域に、
よくぞ言うがまま、素直に入ってくるものだと、
私は感心を通り越して、呆れてしまったのだが、
彼もよほど追い詰められた状況なのであろう、
何かヒントらしきものを掴んだ気配のある私に、
一縷の望みを託しているようだ。
溺れる者は、藁をも掴む、か。
・・って、キューセーシュってのは、溺れちゃいかんだろうよ。

彼の絶叫を聞きつけて、狭い廊下の奥、
妻が、あれは恐らく、身を隠して、覗き見をしているつもりなのだろう、
顔半分をキッチンの仕切りのカーテンに隠してこちらを見ているのだが、
哀しいかな大きな腹と尻が、ほぼ全て露出している。

「君は、とりあえず、お茶でも飲んどけよ。
少しは落ち着くだろう。
僕は、ちょっと、出かけてくる。
なあに、すぐに、ほんの5分ほどで戻るよ。
たぶん、それで、君の謎が解けるはずだ。
おい、民子。
キューセーシュ君に、お茶、淹れてやってくれ」

私は、妻に声を掛けてからサンダルを突っかけると、
エレベーターを待つのももどかしく、階段を脱兎の如く駆け下りた。
私には、既に凡その見当はついていた。
確か4階に空きが出て、入居者募集の張り紙が出ていたはずで、
だとすれば、2〜3日前に不法に投函されたというチラシが、
1階玄関脇の集合ポストに突っ込まれたままになっていても、
何ら不思議は無いのである。
そう、あの妻が不用意に捨ててしまったというチラシさえ手に入れれば、
青年イヤミ君の「キューセーシュの悲劇」の説明がつくはずだ。

1階の集合ポストの405には、果たして、不法投函のチラシが、
春先の筍のように、実にもりもりと力強く突き出ていた。
私は、それを根こそぎ引き抜くと、1枚1枚チェックを始めた。
いやいやいや、それにしても凄い枚数である。
フィットネスクラブに、学習塾、リサイクルショップに、美容院、
外壁リフォームに、シロアリ駆除、中古マンションに健康食品。
しかし、多いのは、やはり宅配系のチラシで、
大手の宅配ピザ屋、宅配の寿司屋が数社、
蕎麦屋の出前表も何軒かあったが、
こうして1つずつチェックしてみると、宅配には、
実に多種多様な商売が参入していることがわかった。
朝採れの野菜や、卵なんかは美味しそうでいいなと思うし、
最近流行っているCDやDVDのレンタルなんかも便利だとも思う。
ただ、中には、こんなものまで、なぜ宅配するのかと、
疑問視せざるを得ない商品までいくつか見受けられて、
宅配納豆、宅配塩辛、宅配豆腐、宅配干物などは、まだ分かるが、
宅配たわし、宅配便座カバー、宅配腐葉土などは、採算が取れるのだろうか?
更に、宅配褌、宅配神棚、宅配日章旗に至っては、
何を考えているのかと、他人事ながらに心配してしまう。

私は、チラシを1枚1枚チェックしては、傍らの段ボール箱に廃棄しつつ、
暫くの間、目的のチラシを探し続けていたが、
ついに、ついに見つけた。
ぺらぺらで黄色地の上質紙に片面赤1色の文字。
いかにも下品で、チンケで、いかがわしくて、破廉恥で、
こんなものに電話をした妻の精神構造を分析してみたいというくらい
本当に酷いチラシ「無料相談 宅配救世主」を、
私は、ようやっと手にしたのだった。

《つづく》




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 現代小説 お取り寄せ救世主

posted by maruzoh at 15:30| Comment(0) | ◆お取り寄せ救世主 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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