やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年01月12日

お取り寄せ救世主 第3回


お取り寄せ救世主 第3回

埼玉県、東武東上線坂戸駅から徒歩10分ちょっと。
築18年、家賃7万6千円の2DK賃貸マンション、その302号室で、
もう1度、ピィン ポォーンと呼び鈴が、いつもより3割り増しの荘厳さで鳴り響く。

「お・・おい。また、ピィンポォーンって・・・」

「神様、来たんじゃないの?
そうよ。 きっとそうに違いないわ。
でなきゃ、使徒かなんかじゃないの?」

「だって、もう10時を回ってるんだぞ。
常識が無いにも、程があるだろ」

そう、もう、かなり遅いのである。
夫婦間の不毛な激論で晩飯の時間が長引いたこともあり、
ダイニングキッチンの時計の針は、既に10時12分を指していた。
アポなしの訪問、しかもそれが、初対面だったとすれば、
ホントこれは、非常識この上ない時間帯と言わざるを得まい。

「でもね、きっと神様には、
下世話な人間界のルールなんて、関係ないのよ。
人間じゃないんだもの・・・
そうよ、そうだわよっ!
あたし、完全にわかったわ。
あんたが言う通り、初対面でこんな時間に尋ねてくる、
そんな非常識な人間なんて、確かにいないわよ。
でも、現実には、何者かが尋ねてきて、ピンポンしてる。
じゃあ、ドアの向こうの人間じゃない生物は、何なの?
野良犬、野良猫じゃないのは当たり前、
野良烏でも、野良亀でも、野良猿でもないわ。
と、なれば、これはいったい誰よ?
そう、神様よ、神様に違いないわ」

こんな非常識な人間はいない=人間ではない何者か=神様。
この実に妻らしい、自分勝手で短絡で飛躍しまくった三段論法は、
ある意味、私の頭の芯を無性に感動させた。
私は、この螺子の飛んだような妻を心の底から愛しく思い、
それと同時に、自分は彼女のブレーキ役たり得るべく、
努めて冷静にならねばと、そう心に誓った。

「しかしだな、非常識極まりない人間かもしれないよ。
もし、これが、神様で無く人間だったとしたら、
犯罪を犯したり、人を騙したりするような輩かもしれんぞ。
最近、またオレオレ詐欺とか、流行ってるんだからさ」

「何言ってるのよ。
直接家までやってきて、ピンポンするオレオレ詐欺なんて、
そんなの1度だって聞いたこと無いわよ。
でも、あんたの言ってることも理解できない訳じゃないわ。
あたしは、この通りか弱い女性だし、危険すぎるわ。
あんた、ちょっと見てきてよ」

妻は、でんと座って腰から下は全く動く気配さえなく、
茶を啜ったまま、顎を玄関の方に杓り上げて見せた。

わかってるよ。
面倒なこと、と言うより、3度の飯の支度、片付け以外は、
一事が万事、何から何まで、全てが、私の担当なんだ。
私は、湯飲みを置いて席を立つと、
ダイニングから玄関に続く狭くて短い廊下を
妻の手前、無表情を気取って歩いていったのだが、
その実、内心は、かなりの不安と動揺でゆりかごの様に揺れていた。。
妻の夢を壊したくなかったので、敢えて言わないでいたが、
不法投函のチラシで救世主でございなんて言ってる輩は、
どうせ、心霊商法のインチキ営業マンか、
カルト教団の勧誘に相場は決まっている。
チェーンは絶対開けずに、ちょっとでも怪しければ110番。
質問なんてもっての外。
興味を持った風に見せかけてもいけない。
そういった意味では、妻が自ら玄関に行かなくて助かった。
この場は、妻のものぐさに感謝しないと。

さて、私はまず、玄関のドアに付いた丸い覗き穴から、
ドアの向こう側の人物を覗くことにした。

「?」

確かに妻が言った通り、
犬、猫、烏、亀、猿のいずれでもなく、
私が想像した霊感商法の営業マンでもなさそうだった。
そこにいたのは、Tシャツ姿の細身で長髪の男。
この広角レンズを通すと、誰もが間抜け面に見えるものだが、
この男の精彩を欠いた容貌というのは、どうだろう。
日本人らしいのだが、しかし、見様によっては、
まあ、イエス・キリストに見えないこともない。
でも、どちらかと言えばなぁ、
キリストとかと言うよりも、若い頃のフレディ・マーキュリーを
もっともっと、20倍くらい貧相にした感じかも・・・

でも、どこかで、会った気が・・・
何処でだろう?
いつだろう?
どうしても思い出せない・・・

あっ、そうだ!
イヤミだよ、イヤミっ!
赤塚先生のマンガで「シェー」ってやる、あのイヤミに似ているんだ。
イヤミが仮装大賞に参加してキリストの真似したみたいなのが、
今、ウチの玄関の向こうに、ただぼーっと立っている。

《つづく》




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 現代小説 お取り寄せ救世主

posted by maruzoh at 09:07| Comment(0) | ◆お取り寄せ救世主 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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